« その32 | トップページ | その34 »

その33

 だが、その明かりは二度とは見えなかった。勇一の言うとおり密漁船だったのかもしれない。
 かがり火が隆栄丸の東進によって徐々に接近する。

「どないやしょ」
 勇一が大声で振り向く。

「あと少しです」
 浩也は立ち上がって答えた。

 かがり火はいよいよ接近した。もう少しだ。

「もうちょっと、もうちょっと・・・・・・はい、出会ったぁ!」
 浩也が叫ぶ。

 勇一が慌てて舵をきった。
 隆栄丸は左に大きく船体を傾け舳先を南に振った。
 勇一が、かがり火を縦に重ねて見ながら南進の速度を上げる。

 やがて前方に、加太から連なる和歌山の夜景が見え始めた。
 星が降り積もったような夜景。その上には見事なまでの神無月が浮かんでいる。

 二百年前につむじ風剛右衛門(かぜのこうえもん)が見た月も、今浮かんでいる月も変わりない。時間と共に移り変わっていくのは、地表だけだ。

 隆栄丸が住友金属の高炉の南側に差し掛かった。

「おぉ見てみい、城が光ってらっしょ」
 勇一が言った。

 遠くに白光する和歌山城が浮かびあがった。
 和歌山城は観光シーズン中はライトアップを行っている。浩也はそんなことも計算済みだ。南進と共に神無月が徐々に城の上空に近づく。

「僕は艫でかがり火を見ます」
 と浩也。

「私は神無月と城を見るわ」
 とリエ。

「よっしゃ、一致したらワイが竹落とすっしょ!」
 勇一は片手で舵を握ったまましゃがむと、笹竹についたロープを確認した。ロープの先にはおもりのブロックが二ついている。

「かがり火は出会ったままです」
 浩也が繰り返す。

「後ちょっとよ」
 リエの甲高い声が上がる。

 えっ? 
 と浩也の絶句。
 視界からかがり火が忽然と消えてしまった。そんな馬鹿な。

「二つともかがり火が消えました」
「なっ、なんやてっ」
 勇一が船を減速する。

「ちゃんと見えてるやないかあ」
 勇一の言うとおり、振り返るとかがり火は二つとも見えていた。

「すいません見間違えました」
 浩也は見間違いはないと思ったがとりあえずそう言った。

「あっ、消えた」
 今度はリエが言った。

「なんてよぉ」
 勇一は上げたエンジンをまた下げた。

「勇一、エンジン切って」
 リエが駆け寄って早口で言うと、勇一は素直にエンジンを切った。

 隆栄丸から一切の照明が消える。
 タイミングを合わせたように黒いちぎれ雲が神無月を覆った。漆黒の闇。ザワザワと波の音だけが騒ぐ。右手に伸びる和歌山の夜景、その左手は暗闇で微かに淡路側の灯が点在するだけだ。

 浩也は、不規則に揺らぐ船底を這い蹲って躁船室までたどり着いた。
 三人は躁船室で寄り添うようにしてかがり火の方を見た。

 かがり火はひとつになったり二つになったり、全部消えたりしている。
 時折船底を突き上げる小さな揺れが恐怖心をあおり立てた。

「なっなんなんやしょこれぇ」
 勇一の声が裏返った。

やっぱり鮎釣り師だからなぁ。う~ん、カテゴリーがど~も落ち着かないなぁ。confident 

にほんブログ村 釣りブログ 鮎釣りへ

こちらの順位争いは熾烈だニャcoldsweats01 

ブログランキング★小説

1resan

ガバチャのひとり言wink

今日は花粉か黄砂がスゴク飛んでます~shock

下記サイトもヨロシクcancer

鮎釣り師のひとり言

ごりやんくん ありがとう  (児童小説)

安田川 (鮎釣り小説)

大阪HFGのホームページ

|

« その32 | トップページ | その34 »

小説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« その32 | トップページ | その34 »